静寂を破る「パチン」という音。それが、完熟あまおうが目覚める合図
朝4時。まだ星が残る冷えた空気の中、完熟したあまおうの。 指を添え、わずかに力を込める。
「パチン」
静寂の中に、驚くほど澄んだ音が響く。 この音は、苺が「今、最高に美味しいですよ」と私に告げる、合図。 この音を聴くためだけに、私は一年を捧げていると言っても過言ではありません。
なぜ、これほどまでに朝にこだわるのか。 それは、苺が夜の間に糖分をぎゅっと蓄え、果肉が最も引き締まっているのが「夜明け前」だからです。
太陽が昇れば、実は柔らかくなり、繊細な香りは逃げてしまう。 「パチン」と鳴るあの瞬間の張りこそが、お届けした時にあなたの口の中で溢れ出す、あの濃厚な果汁の正体なのです。
土の温度、水の一滴、昨日の日照時間。 すべてが複雑に絡み合い、一粒の味が決まる。
「これで完璧だ」と思った瞬間に、また新しい課題が見つかる。 あまおう栽培は、まるで底のない深い海を潜っているようです。 でも、だからこそ面白い。その「奥深さ」に挑み続けています。
明日、箱を開けた時。 もし可能なら、少しだけ目を閉じてみてください。
そこには、私が明け方のハウスで聞いた、あの「パチン」という静かな音と、澄んだ空気の気配が閉じ込められているはずです。